産業用ネットワークとは?PLCと上位システムをつなぐ通信の基本

産業用ネットワークとは?

産業用ネットワークとは、工場や製造現場における制御機器や情報機器をつなぐ通信ネットワークです。

PLC(シーケンサ)、センサ、インバータ、HMI、パソコン、上位システム(MES・SCADAなど)をつなぎ、リアルタイムかつ高信頼性の通信を実現します。

一般のオフィスのネットワークと違い、産業用ネットワークでは次のような特徴が求められます。

  • 通信のリアルタイム性(ミリ秒単位の応答)
  • ノイズ・温度・振動など過酷な現場環境への耐性
  • 設備トラブル時でも自動復旧や局所制御が可能な柔軟性

なぜPLCに産業用ネットワークが必要なのか?

近年の製造現場では、設備がますます高度化・複雑化しています。

そのためPLCは単なる制御機器ではなく、情報収集・連携の中核デバイスとして進化しています。

⏩PLCにネットワークが必要な理由

  • 多数のI/O機器やセンサとの接続を簡素化(省配線)
  • 他のPLCや装置との同期・協調制御
  • 上位システムと連携し、トレーサビリティや見える化を実現
  • IoT・AI活用のための現場データの収集と転送

代表的な産業用ネットワークの種類と特徴

以下は代表的な産業用ネットワークの一例です。

ここで紹介するもの以外にも、さまざまな種類があります。

ネットワーク名特徴主な用途
CC-Link三菱電機が開発したネットワーク。高信頼性・リアルタイム性能に優れるI/O制御、設備間通信
CC-Link IECC-LinkのEthernet版。ギガビット対応多軸制御、MES/SCADA連携
EtherNet/IP汎用LAN対応。他社製PLCとも接続可能他メーカーPLCとの装置連携
Modbus RTU/TCP1979年にModicon社が開発した通信プロトコルで、古い設備にも対応可能なシンプルな仕様。計測機器、小規模設備
OPC UAデータ標準化、セキュリティ対応。IoT連携に強いクラウドや上位分析システム連携
SLMP(MCプロトコル)三菱電機の独自プロトコル。PC・タッチパネル連携に便利SCADA・PCとの直接通信など

三菱電機シーケンサシリーズ別 対応ネットワーク一覧

三菱電機のMELSECシリーズは、CPUの性能や用途に応じて対応するネットワークが異なります。

各シリーズが対応している主なネットワークを、以下にまとめました。

PLCシリーズ主な対応ネットワーク特徴・用途
iQ-RシリーズCC-Link IE Field / IE TSN, Ethernet/IP, SLMP, OPC-UAハイエンド用途。IoT、スマートファクトリーに最適
QシリーズCC-Link / CC-Link IE, SLMP, Modbus多機能・モジュール構成に柔軟対応
LシリーズCC-Link, SLMP, Modbus TCP中小規模設備向け。コスト・柔軟性のバランス
iQ-FシリーズCC-Link IE, Modbus RTU/TCP, SLMP小規模設備、教育用途などに最適
FシリーズCC-Link, Modbus RTU古い機種でも通信ユニット追加で対応可能

ITとOTをつなぐ時代のPLC

PLCは今や、単なる“制御盤の頭脳”ではありません。

現場のセンサや設備からデータを吸い上げ、AIやクラウドシステムに送り出す、製造DXのゲートウェイとして、以下の役割を果たしています。

  • 設備の状態監視や予知保全
  • 生産データのクラウド蓄積と可視化
  • 上位システムとのシームレスな連携

これらはすべて、産業用ネットワークが支えています。

まとめ

産業用ネットワークは、現代のPLC制御に欠かせない基盤です。

三菱電機のシーケンサは、CC-Linkをはじめ多様な通信方式に対応しており、設備の規模や用途に応じた柔軟なネットワーク構成が可能です。

これからの製造業では、スマート化やITとOTの融合が加速していきます。

PLCエンジニアにとって、通信やネットワークの知識はますます重要なスキルになるでしょう。

このサイトの記事を参考に、ITとOTをつなぐ力をぜひ身につけてください。

次の記事では、「IT-OT連携とは?|製造業に求められるスキルと役割」について解説します。

👉 次の記事:「IT-OT連携とは?|製造業に求められるスキルと役割」はこちら

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しーけん師匠

「しーけん師匠」こと当サイト運営者は、制御エンジニア歴35年以上。三菱電機製シーケンサや産業ネットワークを中心に、現場からIT/OTの連携まで幅広く対応。若手に制御エンジニアの魅力を伝え、業界の活性化と人材不足の解消を目指して情報を発信中。

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