IT-OT連携とは?|製造業に求められるスキルと役割

はじめに

近年、製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進んでいます。

その中で注目されているのが「ITとOTをつなぐ力」、すなわちIT-OT連携スキルです。

現場のPLCやセンサなどを扱うOT(Operational Technology)と、上位システムやクラウドを管理するIT(Information Technology)の間には、役割も文化も大きな違いがあります。

このギャップを埋め、現場の改善や効率化を進めるのが、IT-OT連携の目的です。

ITとは?OTとは?

項目IT(情報技術)OT(制御技術)
主な対象サーバー、ネットワーク、クラウド、アプリPLC、センサ、モーター、ロボット
活動範囲情報処理、業務管理、生産計画など設備制御、安全制御、リアルタイム処理
特徴柔軟性が高い、進化が早い高信頼性、リアルタイム性重視
トラブル時復旧優先、影響範囲を限定停止はNG、即時対応が求められる

OTエンジニアがITの考え方を、ITエンジニアがOTの現場感を理解することが、連携の第一歩です。

なぜIT-OT連携が必要なのか?

従来の製造業では、OT(現場)とIT(管理部門)がそれぞれ独立しており、情報共有やデータ活用が十分に行われていませんでした。

しかし現在では、以下のようなニーズが高まっています。

  • 設備の稼働データをリアルタイムに収集し、トラブル予兆を検知したい
  • 生産実績や品質データを見える化して、改善につなげたい
  • 経営層が、現場の状況をタイムリーに把握したい

こうしたニーズに対応するには、PLCなどのOT機器から収集したデータを、ITシステムに連携することが不可欠です。

IT-OT連携に必要なスキルとは?

IT-OT連携を実現するには、以下のようなスキルや知識が求められます。

基礎スキル

  • PLCやセンサの信号、制御構成の理解
  • IPアドレスやネットワーク構成など、基本的なIT知識
  • 上位システム(SCADA、MES、BIツールなど)の仕組みの把握

実践スキル

  • PLCとPCやクラウドをつなぐ通信プロトコル(SLMP、OPC UA、MQTTなど)の活用
  • IoTデバイスの設計や導入方法の理解
  • 生産データの可視化や分析手法(Python、Excel、BIツールなど)

セキュリティと保守

  • 制御システム特有のセキュリティ対策(IEC 62443など)
  • 通信トラブル時の影響を考慮したネットワーク設計
  • IT側・OT側のそれぞれにおけるバックアップ・保守運用設計

事例から見るIT-OT連携のメリット

IT-OT連携を行うことで、以下のようなメリットがあります。

  • 設備の異常予兆をAIが検出 → 保全工数を30%削減
  • 製造実績をクラウドへ送信 → 経営レポートを自動生成
  • 設備の稼働ログを分析 → ボトルネックを可視化し、改善策を立案

まとめ|”つなぐ力”が、次世代のPLCエンジニアに必要な力

これからの製造現場では、制御機器の操作スキルだけでは不十分です。

ITとOTの両方を理解し、情報を「つなげて活用する」力が求められています。

まずは基本的なITの知識から始め、少しずつネットワーク・データ活用・セキュリティへと学びを広げていきましょう。

👉 次回は「ITとOTの違いと役割|PLCエンジニアが知っておくべき基本知識」について、さらに詳しく解説します。

ITとOTの違いと役割|PLCエンジニアが知っておくべき基本知識ITとOTの違いと役割|PLCエンジニアが知っておくべき基本知識
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しーけん師匠

「しーけん師匠」こと当サイト運営者は、制御エンジニア歴35年以上。三菱電機製シーケンサや産業ネットワークを中心に、現場からIT/OTの連携まで幅広く対応。若手に制御エンジニアの魅力を伝え、業界の活性化と人材不足の解消を目指して情報を発信中。

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