ラダープログラムとは?PLC制御の基本構造と読み方をわかりやすく解説

ラダープログラムとは?

ラダープログラム(Ladder Diagram、LD)は、PLCプログラミングで最も広く使われている視覚的な言語です。

名前の通り、はしご(Ladder)のように左右の縦線(母線)と横棒(命令)で構成されており、リレー回路を模した構造になっています。

元々は電気制御技術者が理解しやすいように設計されたため、直感的でとっつきやすいのが特徴です。

ラダー図は「IEC 61131-3」の標準言語

ラダー図は、PLCの国際規格「IEC 61131-3」で定義された5つの標準言語のひとつです。

この標準では、以下の5つのプログラミング言語を定義しています。

  • ラダー図(LD):グラフィカルな言語で、電気回路図に似た形式で制御ロジックを表現します
  • ファンクションブロックダイアグラム(FBD):グラフィカルな言語で、機能ブロックを使用して制御ロジックを視覚的に表現します
  • 構造化テキスト(ST):テキストベースの言語で、高度なアルゴリズムやデータ処理に適しています
  • 命令リスト(IL):テキストベースの言語で、低レベルの命令を使用して制御ロジックを記述します
    ※現在は非推奨
  • シーケンシャルファンクションチャート(SFC):一連の制御動作における各処理を1つのステップとして表し、 プログラムの実行順序や実行条件を明確に表現できるようにした、グラフィカルなプログラミング言語です

ラダー図の基本構造

ラダー図は、以下のような構成を持っています。

  • 左電源ラインと右電源ライン(縦線):電源の流れを模した基準線(母線と言います)
  • 接点(入力):スイッチやセンサを模した「X0」「X1」など
     → LD X0、AND X1
  • コイル(出力):モーターやランプに相当する「Y20」「Y70」など
     → OUT Y70

例:自己保持回路の簡単なラダー図

  • X0:スタートスイッチ
  • Y70:自己保持された出力(例:ランプ)

この構造によって、スタートスイッチを1度押すと、Y70が維持される動作をします。

ラダー図で扱う値と数値表現

PLCでは、ビット(ON/OFF)とワード(16ビットデータ)の2種類のデータを扱います。

数値表現には以下の種類があります。

  • 10進数:0~9の10種類の数字を使って、数値を表現する方法。日常生活で私たちが普段使っている数の表記方法(例:1234)
  • 2進数:0と1の2種類の数字だけを使って数値を表現する方法。電気信号のON(1)とOFF(0)を用いた表現方法(例:0000000010011101)
  • 16進数:0から9の数字とAからFの6つのアルファベットを使って数値を表現する方法。アドレスやメモリの表現でよく使われる(例:H0010)
  • 8進数:0から7までの数字を使って数値を表現する方法。現在では16進数が主流となり、8進数の利用頻度は低い

PLC制御では2進数とビット演算の理解が非常に重要です。

PLCのラダー制御では、ビット単位で入力や出力を扱うため、2進数の表現やビット演算の理解が欠かせません。

各I/O信号は0か1の状態を持つため、2進数の基本操作を理解することが、PLCプログラムを正しく設計・運用するうえで重要です。

また、内部メモリの使用や複雑な条件処理にもビット操作が欠かせないため、2進数の扱い方をマスターすることは、効率的なラダー回路設計の基礎になります。

PLCプログラムの基本的な仕組み

PLCのプログラムは、装置の動きを自動で制御するために「入力 → 演算 → 出力」の流れを繰り返し高速で実行しています。

以下の図は、PLC内部の基本構造と動作の流れを示したものです。

📥 入力インターフェイス

リミットスイッチや押しボタンスイッチなどの入力機器からの信号(ON/OFF)を受け取ります。

🧮 演算部・記憶部

入力された信号をもとに、PLCエンジンが事前に設定されたラダープログラムに従って処理(演算)を行います。

処理の中間結果はメモリ(記憶部)に保持されます。

📤 出力インターフェイス

演算結果に基づいて、ランプ・電磁弁・モーターなどの出力機器を動作させます。

この処理は非常に高速に繰り返されており、1回の処理サイクルは「スキャン」と呼ばれます。

通常は数ミリ秒以下で1スキャンを完了するため、非常にリアルタイム性の高い制御が可能です。

ラダープログラムの実行順序

ラダー図の実行は以下の流れで進行します。

  1. 左上から右へ、上から下へ命令を順番に評価
  2. 各「回路ブロック」単位で処理
  3. 最後に「END命令」を実行し、再び先頭へ戻る

上図では、①~⑮の順で実行されます。

これを「スキャン処理」と呼び、1スキャンにかかる処理時間を「スキャンタイム」と呼びます。

まとめ

ラダー図は、PLC制御の基本でありながら、直感的でわかりやすく、リレー回路の経験がある方にとっても親しみやすい言語です。

PLCの学習を進めるうえで、「ラダー図の構造」「命令の読み方」「2進数の扱い方」を理解することが、確かなプログラム設計の第一歩になります。

次は、「よく使うラダー命令と構文一覧」を学んで、実際の回路作成にチャレンジしてみましょう!

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しーけん師匠

「しーけん師匠」こと当サイト運営者は、制御エンジニア歴35年以上。三菱電機製シーケンサや産業ネットワークを中心に、現場からIT/OTの連携まで幅広く対応。若手に制御エンジニアの魅力を伝え、業界の活性化と人材不足の解消を目指して情報を発信中。

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