
もくじ
ChatGPTの実務での活用例と限界を徹底解説
近年、生成AIの進化が目覚ましく、製造業の現場にもその波が押し寄せています。
中でも注目されているのが、ChatGPTなどの生成AIを活用したPLCプログラムの作成です。
では、実際にChatGPTでPLCのプログラム作成はできるのでしょうか?
本記事では、筆者が試した事例をもとに、活用の可能性と限界をわかりやすく解説します。
ChatGPTではPLCプログラムをどこまで作れるのか?
ChatGPTに「ラダープログラムを作ってください」と依頼すると、基本的な回路であればそれらしいコードを自動生成してくれます。
例えば、以下のような自己保持回路は問題なく出力されます。
LD X0
OR Y0
AN X1
OUT Y0
このように、簡単なパターンであれば、IL(命令リスト)形式で比較的正確なコードが得られます。
しかし、ラダープログラムの作成はできません。
作成はしてくれますが、以下のように変なラダープログラムが作られます。

また、同じ処理を繰り返すようなコード(例えば10系統分の自己保持回路)も、ChatGPTは一定の規則性を理解して正確に展開してくれます。
ST言語やPLCopen XML形式にも対応できる?
ラダー図だけでなく、ST(Structured Text)言語への変換も可能です。
例えば、複数のスタート・ストップスイッチとモーターを配列で管理するSTコードも、以下のように生成できます:
FOR i := 0 TO 9 DO
IF StartButton[i] THEN
MotorOutput[i] := TRUE;
END_IF;
IF NOT StopButton[i] THEN
MotorOutput[i] := MotorOutput[i];
ELSE
MotorOutput[i] := FALSE;
END_IF;
END_FOR;
このようなループ構造をChatGPTに依頼すれば、時間短縮や効率化の助けになります。
さらに、ChatGPTはこのSTコードをPLCopen XML形式に変換することも可能です。
これは、ドキュメント作成や一部ツールでのコードインポートに活用できる点も注目です。
現場での活用例|こう使えば便利!
筆者は、ChatGPTを以下のように活用しています。
- ✅ 若手教育用の例題作成(自己保持回路やタイマ回路など)
- ✅ 繰り返し構造のラダーやSTコードの自動生成
- ✅ 仕様書や命令リストの下書き支援
- ✅ ST → XML 形式への変換でドキュメント補助
一から人が書くよりも「下地を作る」という意味では十分に実用的であり、 特にルール化されたコードやテンプレート化された処理には非常に強みを発揮します。
限界と注意点|そのままでは使えないケースも
ただし、ChatGPTにすべてを任せるのはまだ時期尚早です。
以下のような点には注意が必要です:
❌ 機種依存命令に非対応 or 誤解
三菱シーケンサ特有の命令や、iQ-Rシリーズに特有の機能を正しく理解できない場合があります。
❌ 複雑な論理やフローは破綻しがち
複数の条件分岐やタイマ、割込み処理が絡むような複雑回路は、誤解や意図しない挙動になることもあります。
❌ 実行環境との非連携
GX Works3やGX Works2など、エディタへそのまま貼り付けできない形式で出力されるため、修正や再構築が必要です。
では、どう使うべきか?ベストな活用法
現在のChatGPTは補助ツールとして活用するのが現実的です。
以下のような用途での利用が推奨されます:
活用目的 | 内容 |
テンプレ生成 | 自己保持、タイマ、カウンタなどの雛形生成 |
学習補助 | 初心者向けにSTやILの構文を例示 |
ドキュメント出力 | PLCopenXML形式などでの資料化 |
試作支援 | 設計前のたたき台としてのコード生成 |
こうした活用により、作業効率を高めつつ、設計の質を人間が担保するというスタンスが最も効果的です。
まとめ|AIは道具。判断は人間が行う
ChatGPTによるPLC設計は、まだ完全自動化には程遠いものの、ルールに沿ったコードや文書作成の「下地」としては十分に活用可能です。
むしろ大切なのは、AIに期待しすぎず、適切な使い方を見極めるスキルです。
今後も生成AIの進化は続くでしょう。
「AIを活かす力」を持つPLCエンジニアこそが、これからの製造現場で価値を高めていくはずです。
📌 おまけ:ChatGPTへのプロンプト例
「三菱電機のシーケンサで、X0がONするとY0が自己保持し、X1がONで停止するラダープログラムをIL形式で作ってください」
このように、できるだけ具体的な仕様を明示することで、より正確な出力が得られます。
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