
もくじ
ラダープログラムを理解するためには命令を理解することが重要
三菱シーケンサを使ってPLCプログラムを組むなら、まず「よく使う命令一覧」を理解しておくことが欠かせません。
ラダー言語の命令や使い方を、初心者向けにわかりやすく解説した良書もあります。
「これからPLCを学びたい」「制御の基礎からしっかり身につけたい」という方には、以下のような書籍が役立ちます。
✅ 初心者におすすめのラダープログラミング教材はこちら
命令から理解する理由
ラダー命令はPLC制御の“文法”にあたります。
特に三菱シーケンサでは、I/O信号を処理する基本命令から、データ処理命令まで体系的に整備されており、この命令一覧を押さえておくことで現場のプログラムをスムーズに理解できます。
逆に基礎を独学で断片的に学んでしまうと、実務で「回路の動作はわかるけど説明できない」という状態になりがちです。
どんな命令から理解すれば良いか
例えば、入力信号を読み込む LD命令、条件を組み合わせる AND/OR命令、出力を制御する OUT命令。
さらに、現場で頻出する タイマやカウンタを扱う命令。
こうした命令を体系的に理解しておけば、三菱シーケンサのラダープログラムを効率的に「読む力」と「書く力」が身につきます。
命令を理解する重要性
だからこそ、独学で時間をかけすぎず、最初から教材を活用して「三菱シーケンサの命令一覧」を体系的に学ぶことが最短ルートです。
以下に、ラダープログラムで使う命令や良く使う命令、簡単なラダープログラム例を紹介します。
ラダープログラムで使う命令とは?
ラダープログラムは、入力(X)や出力(Y)といった信号に対し、論理演算や動作命令を組み合わせて構成されます。
命令はすべて「ニーモニック形式(LD、OUTなどの略号」で表現され、条件と動作の関係をわかりやすく定義するのが特徴です。
例えば、下図のような表現になります。

命令は、「LD X0」のように「命令+デバイス」で記載します。
三菱電機のシーケンサでも同様に、基本命令と応用命令を組み合わせて制御回路を作成します。
以下で、よく使う基本命令と応用命令について説明します。
よく使う基本命令(接点・出力・論理演算)
基本命令の中でも以下は、シーケンス命令とも言い、ラダープログラムではよく使います。
(以下の命令の詳細については、三菱電機が提供している「プログラミングマニュアル」を参照してね)
| 命令 | 内容 | 例 | 説明 |
| LD | A接点 | LD X0 | X0がONなら真(次の命令実行) |
| LDI | B接点 | LDI X1 | X1がOFFなら真 |
| AND | AND条件 | AND X2 | 直前の条件にAND X2を追加 |
| ANI | AND NOT | ANI X3 | X3がOFFでAND条件成立 |
| OR | OR条件 | OR X4 | 直前の条件にOR X4を追加 |
| ORI | OR NOT | ORI X5 | X5がOFFでOR条件成立 |
| OUT | コイル出力 | OUT Y20 | 条件成立時にY20をON |
| PLS | 立上り出力 | PLS M10 | 条件成立時にM10を1スキャンのみON |
| SET | ラッチON | SET Y1 | 一度ONになると記憶して保持 |
| RST | ラッチOFF | RST Y1 | ラッチを解除してOFFにする |
出力命令(タイマ、カウンタ)
以下のタイマとカウンタも良く使う命令です。
タイマ命令(T)
| 命令 | 内容 | 使用例 | 補足 |
| OUT T0 | タイマコイル | LD X0 / OUT T0 | T0開始 |
| T0 K300 | タイマ設定値 | 3.0秒(10ms × 300) | 設定時間経過でT0接点ON |
カウンタ命令(C)
| 命令 | 内容 | 使用例 | 補足 |
| OUT C0 | カウント開始 | LD X0 / OUT C0 | X0がONになるたびカウント |
| C0 K3 | カウント設定 | 3回ONでC0接点ON | |
| RST C0 | カウンタリセット | LD X1 / RST C0 | X1でカウント値を0に |
よく使う応用命令:MOVと比較命令
データを扱う処理では以下の命令を良く使います。
MOV(データ転送)
| 命令 | 内容 | 使用例 | 補足 |
| MOV D100 D200 | データ転送 | D100の値をD200へ | 同一サイズのワード転送 |
| MOVP D0 D10 | 立ち上がりパルス版 | 一度だけ転送 | 接点のON立ち上がり時のみ実行 |
比較命令(CMP/>/= など)
| 命令 | 内容 | 使用例 | 補足 |
| CMP D0 D1 | 一致・不一致を比較 | D0 == D1 で条件成立 | 結果は内部ビットで取得 |
| > D0 D2 | 大小比較 | D0 > D2 で条件成立 | 三項比較命令も使用可 |
よく使われる命令を使ったラダープログラム例
自己保持回路

- X0:起動スイッチ
- X1:停止スイッチ
- Y70:出力(ラッチで保持)
X0がON、X1がOFFのとき、Y70がON
X1がONになるまで、Y70はONのまま(自己保持)
パルス出力を使った回路

X0がONした1スキャンのみ、M0がON
タイマで3秒後に接点がON

→ X2がON後、3秒経過でY21をON
📚 さらに詳しく学びたい方へおすすめの書籍
ラダー言語の命令や使い方を、初心者向けにわかりやすく解説した良書もあります。
「これからPLCを学びたい」「制御の基礎からしっかり身につけたい」という方には、以下のような書籍が役立ちます。
✅ 初心者におすすめのPLC入門書はこちら
本書のレビュー記事は以下にありますので参考にしてください。
知識ゼロから楽しく学べる!三菱電機「メルセック」でラダープログラムを徹底マスター
よくある質問 (FAQ)
ラダープログラムにおける「命令」とは何ですか?
ラダープログラムにおける命令とは、入力(X)や出力(Y)などの信号に対して、論理演算や特定の動作を組み合わせるために使われる記号やコードのことです。
これらは「ニーモニック形式」(例:LD, OUT)と呼ばれる略号で表現され、条件と動作の関係を分かりやすく定義するのが特徴です。
三菱電機のシーケンサでは、これらの命令を組み合わせて制御回路を作成します。
ラダープログラムの基本的な命令にはどのようなものがありますか?
ラダープログラムでよく使われる基本的な命令には、以下のようなものがあります。
- LD (Load):A接点(通常開接点)を意味し、入力がONの時に真となります。
例: LD X0 (X0がONなら真) - LDI (Load Inverse):B接点(通常閉接点)を意味し、入力がOFFの時に真となります。
例: LDI X1 (X1がOFFなら真) - AND (AND):直前の条件にAND条件を追加します。
例: AND X2 - ANI (AND NOT):直前の条件にNOTつきのAND条件を追加します(入力がOFFでAND条件成立)。
例: ANI X3 - OR (OR):直前の条件にOR条件を追加します。
例: OR X4 - ORI (OR NOT):直前の条件にNOTつきのOR条件を追加します(入力がOFFでOR条件成立)。
例: ORI X5 - OUT (Output):コイル出力を行い、条件成立時に出力デバイスをONにします。
例: OUT Y20 - PLS (Pulse):立ち上がりパルス出力で、条件成立時に指定デバイスを1スキャンだけONにします。
例: PLS M10 - SET (Set):ラッチON命令で、一度ONになると記憶して保持します。
例: SET Y1 - RST (Reset):ラッチOFF命令で、ラッチを解除してOFFにします。
例: RST Y1
これらの命令は「シーケンス命令」とも呼ばれ、ラダープログラムの基礎を形成します。
タイマ命令(T)はどのように機能しますか?
タイマ命令(T)は、設定した時間が経過した後に接点をONにするための命令です。
使用例としては、OUT T0 でタイマのカウントを開始し、T0 K300 でタイマの設定値(この場合、300 × 10ms = 3.0秒)を設定します。
設定時間が経過すると、T0の接点がONになります。
カウンタ命令(C)はどのように機能しますか?
カウンタ命令(C)は、指定された入力がONになる回数をカウントするための命令です。
OUT C0 でカウントを開始し、C0 K3 でカウント設定値(この場合3回)を設定します。
入力X0がONになるたびにカウントが増加し、設定回数に達するとC0の接点がONになります。
また、RST C0 命令(例: LD X1 / RST C0)を使用すると、指定された条件(X1がON)でカウンタのカウント値を0にリセットできます。
MOV命令とは何ですか?どのような用途で使われますか?
MOV命令(Move)は、データを転送するための応用命令です。
例えば、MOV D100 D200 は、D100のアドレスに格納されている値をD200のアドレスに転送します。
これは同一サイズのワード転送に使われます。 MOVP はMOVの立ち上がりパルス版で、接点のON立ち上がり時のみ一度だけデータを転送します。
主にデータを扱う処理において、数値や設定値などを移動させるのに利用されます。
比較命令(CMPや>など)はどのような機能を持っていますか?
比較命令は、二つのデータの値を比較し、その結果に基づいて条件を成立させるための応用命令です。
CMP (Compare):CMP D0 D1 のように使用し、D0とD1の値が一致するかどうかを比較します。
D0 == D1 の場合に条件が成立し、結果は内部ビットで取得できます。
> (Greater Than):> D0 D2 のように使用し、D0がD2より大きいかどうかを比較します。
D0 > D2 の場合に条件が成立します。
三項比較命令なども利用でき、より複雑な条件分岐に活用されます。
ラダープログラムでよく使われる「自己保持回路」とはどのようなものですか?
自己保持回路は、一度出力がONになると、その状態を保持し続けるための回路パターンです。
例えば、起動スイッチ(X0)がONになり、停止スイッチ(X1)がOFFの状態であれば、出力(Y70)がONになります。
Y70がONになると、起動スイッチがOFFになっても、停止スイッチがONになるまでY70はONの状態を維持します。
これは、制御システムで特定の状態を維持する必要がある場合に非常に重要です。
ラダープログラミングの上達のためのヒントは何ですか?
ラダープログラミングを上達させるためには、まずこの記事で紹介された基本的な命令(LD、AND、OUT)や応用命令(タイマ、カウンタ、MOV、比較命令)を確実に理解することが重要です。
そして、実際にプログラミングツール(例:GX Works3)を使ってラダープログラムを組み、その動作を確認することが最も効果的です。
また、自己保持回路やパルス出力回路、タイマを使った回路など、定番の回路パターンを学ぶことも理解を深める助けとなります。
初心者向けの書籍やオンラインリソースを活用することも推奨されます。
まとめ
三菱電機製PLCで使用する命令は、直感的かつ視覚的に理解しやすいものが揃っています。
基本命令(LD、AND、OUT)に加え、タイマ・カウンタ・MOV・比較命令などを活用することで、現場の複雑な制御にも対応できます。
まずはこの記事で紹介した命令から確実に理解し、実際にプログラミングツール(GX Works3など)でラダープログラムを組んで動作を確認することが上達の近道です。
最後におすすめの書籍を再度紹介します。
「これからPLCを学びたい」「制御の基礎からしっかり身につけたい」という方は参考に確認してください。
次にラダープログラムで定番として使う回路パターン集を解説しますので、こちらも読んで各命令の動作を理解しましょう。
👉 「基本回路パターン集|タイマ・自己保持・カウンタの応用例」はこちら
基本回路パターン集|タイマ・自己保持・カウンタ・フリップフロップの応用例
