自己保持回路とは?基本から洗濯機シーケンスの例まで解説

自己保持回路とは

自己保持回路とは、一度入力がONになると入力がOFFに戻っても出力を保持し続ける回路のことです。

代表的な例は「スタート・ストップ回路」です。スタートボタンを押すとモーターが動き出し、ボタンから手を離してもモーターは動き続けます。そしてストップボタンを押すと動作が停止します。

「保持」と「自己保持」の違いを簡単に言うと、保持は外部のリレーやメモリで保持する方法自己保持は出力自身を回路に戻して保持する方法です。

自己保持回路の基本動作

自己保持回路を構成する基本要素は以下の通りです。

  • スタートスイッチ (X0)
  • ストップスイッチ (X1)
  • 出力リレー (Y20)

動作の流れはシンプルです。

  1. スタートスイッチを押すとY20がONになる
  2. Y20自身が回路を保持し続ける
  3. ストップスイッチを押すと保持が解除され、Y20がOFFになる

自己保持回路のラダー図

代表的な自己保持回路をニーモニックで表すと以下のようになります。

解説

  • LD X0 : スタートスイッチを読み込む
  • OR Y20 : 出力自身を自己保持に利用
  • ANI X1 : ストップスイッチが押されたらOFF
  • OUT Y20 : 出力リレーを駆動

この構造を覚えておけば、自己保持回路は簡単に理解できます。

自己保持回路の応用例

(1) 基本的な使い方

  • モーターの運転・停止回路
  • ランプやアラームの保持

(2) シーケンス制御での応用(ステップ制御)

自己保持回路は「ステップを保持し、条件が成立すると次のステップに進む」仕組みを作ることができます。

身近な例として「洗濯機の運転シーケンス」を考えてみましょう。

洗濯機の動作ステップ

  1. スタートボタンで「給水」開始
  2. 水位が規定量に達すると「洗濯」工程へ
  3. 洗濯が終わると「排水」工程へ
  4. 排水後は「脱水」工程へ進む

ラダー図例

; ステップ1:給水

; ステップ2:洗濯

; ステップ3:排水

; ステップ4:脱水

解説

  • 各ステップ(Y10〜Y13)は自己保持でONを維持
  • センサーやタイマが条件を満たすと次のステップへ進む
  • 結果として「給水 → 洗濯 → 排水 → 脱水」と順番に動作が進む

👉 このように、自己保持回路は単なるスタート・ストップ用途だけでなく、シーケンス制御のステップ回路の基礎 としても広く利用されています。

自己保持回路を使うときの注意点

  • 非常停止スイッチは自己保持とは別系統で設計する
  • 誤動作を防ぐため、復帰条件を明確にする
  • ステップ制御では「同時に複数ステップが動作しないようにする」ことが重要
  • PLCのソフトだけでなく、ハード側の安全設計も考慮する

まとめ

  • 自己保持回路は「一度ONすると自分で回路を保持し続ける」仕組み
  • 代表例はスタート・ストップ回路
  • 応用すると、洗濯機のようなシーケンス制御も表現できる
  • 安全性を考慮しながら設計すれば、実務で非常に役立つ
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しーけん師匠

「しーけん師匠」こと当サイト運営者は、制御エンジニア歴35年以上。三菱電機製シーケンサや産業ネットワークを中心に、現場からIT/OTの連携まで幅広く対応。若手に制御エンジニアの魅力を伝え、業界の活性化と人材不足の解消を目指して情報を発信中。

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