もくじ
はじめに
産業用ネットワーク「CC-Link」シリーズには、CC-Link / CC-Link IE / CC-Link IE Field Basic / CC-Link IE TSN など複数の種類があり、用途ごとに選択肢が異なります。
この記事では、それぞれの規格の特徴と違いを整理し、現場での使い分けの判断基準を持てるように解説します。
CC-Linkの誕生
CC-Linkは、1996年に三菱電機が開発し、2000年にオープン化されたフィールドネットワークです。シリアル通信方式を採用し、最大10 Mbpsの通信速度で64局まで接続可能でした。
当初はPLCとリモートI/Oや簡単な機器を接続することを目的としており、センサー信号やリレー制御を効率的に伝送できます。
- 用途:センサー、リレー、基本的なI/O制御
- 課題:リアルタイム性は高いが、Ethernetとの親和性は低く、拡張性に限界
CC-Link IEの登場(Ethernetベース)
制御システムの大規模化や高速化に対応するため、Ethernet技術を取り入れた CC-Link IE (Industrial Ethernet) が登場しました。
通信速度は1Gbpsと、従来CC-Linkより大幅に向上しています。
(1) CC-Link IE Control

- 対象: コントローラ間通信(PLC to PLC)
- 用途: 大容量データのやり取り、上位制御装置間の同期
- 特徴: 制御装置間での大規模ライン制御に最適
(2) CC-Link IE Field
- 対象: PLCとリモートI/O、ドライブ(サーボアンプ)、HMI
- 用途: モーション制御やライン制御
- 特徴: 1 Gbps通信による高速制御、大規模システムにも対応
CC-Link IE Field Basic

コスト重視の用途向けに登場したのが CC-Link IE Field Basic です。100 Mbpsの標準Ethernetインタフェースで動作でき、専用チップを必要としません。
- 特徴: ソフトウェアスタック実装 → 汎用NICでも利用可能
- 用途: 小規模装置、低コスト通信、簡易モニタリング
- 制約: リアルタイム性能や同期精度は限定的
💡 補足:汎用NICとは?
NIC(Network Interface Card)はネットワーク接続のためのインターフェースカード、いわゆるLANカードのことです。
- 専用NIC … 産業用通信に特化したチップを搭載し、高速・リアルタイム通信をハードウェアで処理できる
- 汎用NIC … PCや一般機器に標準搭載されている、通常のEthernet通信に対応するだけのLANカード
CC-Link IE Field Basicは、ソフトウェアで通信処理が可能なため、この汎用NICでも動作します。
汎用NICを使用するメリットとデメリットは以下になります。
- メリット: 専用ハード不要で低コスト導入が可能
- デメリット: 高速・高精度な同期制御には不向き
CC-Link IE TSN(最新世代)

最新の規格が CC-Link IE TSN です。Time-Sensitive Networking (TSN) 技術を採用し、IT通信と制御通信を同一ネットワーク上で共存可能にしました。
- 通信速度: 100 Mbps / 1 Gbps両対応
- 特徴:
- 高精度な時刻同期 (±1 µs級)
- 通信スケジューリングによるジッタ抑制
- 制御通信とIT通信を同一配線で両立
- 用途: ロボット制御、モーション制御、IoT/クラウド連携ライン
CC-Linkファミリーの比較表
規格 | 通信媒体 | 速度 | 主な用途 | 特徴 |
CC-Link | 専用線 | ~10 Mbps | I/O制御 | レガシー。シンプルで安定 |
CC-Link IE Control | Ethernet | 1 Gbps | PLC間通信 | 大容量データ同期、上位制御 |
CC-Link IE Field | Ethernet | 1 Gbps | I/O・モーション制御 | 高速・大規模ライン対応 |
CC-Link IE Field Basic | Ethernet (汎用) | 100 Mbps | 小規模装置通信 | 専用ハード不要、低コスト導入可能 |
CC-Link IE TSN | Ethernet+TSN | 100M/1Gbps | モーション+IT連携 | 高精度同期+IT/OT共存、次世代主流規格 |
使い分けの目安
- 既設のシンプルなI/O制御 → CC-Link
- PLC間の大容量データ交換 → CC-Link IE Control
- 大規模ライン制御・高速モーション → CC-Link IE Field
- 低コスト・小規模システム → CC-Link IE Field Basic
- 最新ライン、IT連携・IoT前提 → CC-Link IE TSN
まとめ
CC-Linkファミリーは、進化の過程で多くの規格が派生してきました。
- 小規模かつコスト優先なら Basic
- 高速制御・大規模ラインなら Field/Control
- 将来的な拡張やIoT連携を視野に入れるなら TSN
今後の主流はTSNへ移行していきますが、既設資産やコスト要件に応じて従来規格も活用され続けます。
三菱PLCを使うエンジニアにとっては、シリーズごとの対応ネットワークを把握することが、設計・保守の第一歩です。
👉 次の記事では、この中から CC-Link IE TSN をさらに深掘りし、「仕組み・強み・導入時のポイント」を詳しく解説していきます。